助産師さんからの手紙 

研修を通して学んだこと

日本母乳ケア研究会私はこれまで、妊娠中・産後の方のご自宅を訪問し、ケアを行ってきました。
母子訪問をするたびに感じていたことは、お母さんたちが母乳育児に困っている、ということでした。

 ・母乳で育てたいのだけれど、うまくいかなくて。
 ・おっぱいにしこりが出来てしまったけど、どうしたらよいか分からなくて。
 ・お薬を処方されたのだけれど、母乳育児をしているから、服用してもいいのだろうか?
 ・赤ちゃんがよく泣くのだけれど、母乳が不足しているの?
 ・母乳が良いことは分かっているけど、辛くって・・・

など、母乳に関する質問をよく受けました。母乳育児が盛んに叫ばれている昨今、母乳に関する意識が高いお母さんたちが増えてきています。しかし、どのように母乳育児を進めていいのか分からず、困っているお母さんたちが増えているのも確かだと思います。

母乳育児支援が進んでいるはずなのに、困っているお母さんたちがいる、なんとも不思議でした。しかし、これが病院に勤務しているときには見えていなかった現実だと気がつきました。私自身も、母乳育児に興味があったものの、まだ自分の技術に自信がなかったため、研修を希望し、勉強させていただきました。

まず、研修に行って考えさせられたことは、Y先生の言葉、「私たちは、助産師の前に看護師です。出来る限りの看護を提供すること」看護。それは私が忘れかけていた言葉でした。私は、「おっぱいトラブルの人が来たらどうしよう、どう対応すればいいのだろう、私の手技で治してあげられるだろうか」とばかり不安に思っていました。そして、トラブルを治す手技を身に着けたいと思っていました。しかし、先生は助産師による手技よりも、やさしい思いやり、そして責任がもっと大切だとおっしゃいました。

熱がある方には冷罨法、冷えている方には温罨法、痛みがある方には擦る、話を聞く。看護者として当たり前のことだけど、忘れがちになっていることでした。看護、それは症状の軽減・改善も目的ではありますが、お母さんたちの心の緊張もほぐすものでもあります。いくらおっぱいだけ診ていても、問題の解決に至らないこともあります。おっぱいは精神的なものに左右されやすいです。だからこそ、手のケア、看護が重要になってきます。私たち看護者は十分に理解し、ケアを行っていきたいものです。

また、日本母子ケア研究会の母乳ケアは、乳房だけでなく、体全身を診ていきます。乳房は体の一部であり、独立した存在ではありません。
私は、妊娠中・産後の整体を勉強していました。そのため、体の不調はおっぱいのトラブルに関係があることを感じていました。おっぱいのトラブルを乳房だけからアプローチするのではなく、その方の全身を診て、ケアをしていく、生活指導をしていく、とても大切なことだと感じました。体の不調があると、おっぱいのトラブルが起こりやすく、また精神的な面もナイーブになります。産後のお母さん、妊娠中の方には、特に有効なケア方法だと感じました。

研修中、母乳不足感で来院されるお母さん達も多くいらっしゃいました。日本母子ケア研究会で説明されている、「赤ちゃんの胃の容積は赤ちゃんの手の平や足程度しかなく、一度にたくさんの量を飲むことはできない。だから1~2時間おきの授乳が必要であること」には、たくさんのお母さんが納得され、「気が軽くなりました」と喜んで帰っていかれました。これまで、私も病院に勤務していた時は、「泣いたら、授乳」を指導してきましたが、赤ちゃんには口唇の要求があり、自分から離すことはしないこと、胃の容積を超える授乳は逆に赤ちゃんの負担になること、を伝えていませんでした。そのため、お母さんたちは、「いつまで乳首をくわえさせておけばいいの?母乳をあげても泣くのは母乳が不足しているからなの?」と感じ、過ごしていたと思います。

頻回の授乳で完全母乳をすることはいい事ではあるけれど、授乳で一日終わってしまっては、お母さんたちにとっても楽しい母乳育児でないことを実感しました。これからは、母乳育児を勧めると同時に、短時間の授乳でいいこと、口唇欲求には、おしゃぶりを使用していいことも良い事、また赤ちゃんは他の理由で泣いていることもあるので、口封じのおっぱいにせず、赤ちゃんの反応を見て、欲求を捕らえてあげる重要性をお話していきたいです。

また日本母子ケア研究会では、すぐ薬に頼らず、手当て・ケアをしていました。人間は本来、免疫力を持っているものです。しかし、不規則な睡眠・食事、ストレス、過度な頭脳労働などにより低下してきていると考えられます。それを見直すいい機会にもなっていると考えられます。

日本母子ケア研究会のケアはお母さんたちのおっぱいを見ていくことで、進むべき道を示している、そのように感じました。「おごらず、謙虚な態度で、看護は手厚く」お母さんたちにかかわっていきたいと思います。

お忙しい中、研修を受け入れてくださり、まことに感謝しています。母子ケア研修会で学ばせていただいたことは、私の中で大きな学びとなりました。この経験を活かし、日々のケアに努めたいと思います。